炎症の段階的病態と検査値の変化 第4〜7段階

炎症病態はベッドサイドからみて7段階の順序で進行することが多く、第4〜5段階までに治療方針を決定し実施することが望ましいとされています。第6〜7段階は末期的状態です。

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炎症の段階的病態と検査値の変化 第4〜7段階

4)第4段階:誘導蛋白の発現
β2ミクログロブリンはIFNγ過剰状態で上昇し尿中に排泄されるので、尿中β2ミクログロブリン値をIFNγの指標として、また血清フェリチン値をTNFαの指標として用いることができます。またネオプテリンはIFNα・βの誘導蛋白であるので、これらを指標にサイトカイン・ストームの状況を把握できます。
尿中β2ミクログロブリン値と血清フェリチン値の上昇に、FDP・Dダイマー値の上昇があれば、IFNγとTNFαの過剰症が生じて血管内皮傷害が始まっており、次に生じる細胞障害マーカーの変動に注意が必要となります。

5)第5段階:細胞障害マーカーの上昇
過剰なTNFαがその可溶性レセプターTNFR-1による中和能力を超えると、膜結合型レセプターの結合が始まります。膜結合型TNFαレセプターを介したTNFαの細胞内シグナリングには生体にとって重要なものが多くありますが、ミトコンドリアへのシグナルによる透過性転換は細胞のアポトーシス・ネクローシスを誘導するという点で重要です。しかも。このミトコンドリア透過性転換はシクロスポリンで遮断できることから、適切な時期にシクロスポリンの持続的点滴静注を開始することにより、細胞のアポトーシス・ネクローシスを阻止し臓器を保護することができます。
ASTALT・LDHの上昇は肝機能障害の指標とされますが、幹細胞に特異的な酵素はALTのみです。血清フェリチン値の上昇の後、ALTに対してAST優位の上昇を認め、LDHも上昇し始めたなら、末梢血の白血球を含む全身臓器のTNFαによる細胞傷害が進行しており、病態はDIC・多臓器不全(multiple organ failure:MOF)に向かって急速に進展していくと考えられます。
6)第6段階:脂質系検査値の変化
炎症病態がさらに進行すると、細胞傷害の出現に前後して総コレステロール値の低下、中性脂肪(TG)の上昇がみられます。これはTNFαによるlipoprotein lipaseの抑制が始まったことを示唆しています。
7)第7段階:多臓器不全への進展
血管の内皮傷害が進行し、その修復機転として凝固線溶系が活性化すると、血管内は凝固系優位に傾きます。その結果。全身的にpre-DICからDIC状態に移行し、PT・APTT延長が認められ、出血傾向が認められるようになります。やがてMOFの1つとして腎不全のためクレアチニンが上昇、肝機能障害のためALT・総ビリルビンの上昇、膵傷害のためにアミラーゼの上昇をきたしMOFに至ります。

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