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コリンエステラーゼ(cholinesterase:Ch-E)は、コリンエステルをコリンと有機酸に加水分解する酵素で、肝や血液中に存在します。
コリンエステラーゼには、アセチルコリンのほかに種々のコリンエステルおよび非コリンエステルをも加水分解する「偽性Ch-E」(pseudo-cholinesterase)と、神経・筋肉・赤血球に存在してアセチルコリンを特異的に加水分解する「真性Ch-E」(true-cholinesteraseまたは acetylcholinesterase)が存在します。
肝機能検査として用いられるのは前者(偽性Ch-E)で、肝で合成され血中に分泌されるため、血清Ch-Eの活性の低下は肝実質細胞の機能障害を反映します。また肝での蛋白合成能を知る指標一つであり、血清アルブミン低下ともよく相関します。
コリンエステラーゼは、肝疾患以外にも全身状態の悪化や栄養障害、外科的手術の侵襲により低下します。一方ネフローゼではコリンエステラーゼの分子量が大きく尿中へ漏出しにくいため、アルブミンとは反対に上昇します。また、治療に用いられるような抗コリンエステラーゼ剤の投与では低下は通常軽度です。しかし、有機リン剤の農薬やカーバメイト剤、サリンによる中毒では急激な低下を来たし、重症度の指標となります。
遺伝性の変異型コリンエステラーゼ血症では、通常は臨床所見に乏しく、低値を示し、手術等で用いられるサクシニルコリンなどの筋弛緩剤投与で、無呼吸をきたします。コリンエステラーゼの異常低値が発見のきっかけになります。
なお、赤血球中には多量の真性コリンエステラーゼが含まれているため、測定法によっては、著しく溶血の影響を受けます。アセチルコリンを基質とする方法では真性コリンエステラーゼにより分解されるために著明な影響を受けるのに対し、ベンゾイルコリンおよびその誘導体、ブチリルチオコリンは真性コリンエステラーゼに対する親和性が極めて小さいため、これらを用いる方法は溶血の影響をほとんど受けません。
検査材料:血清
測定方法:p-ヒドロキシベンゾイルコリン法
基準値:単位(IU/l/37℃)M234〜493 F200〜452
高値を示す病態
脂肪肝、急性肝炎回復期、肝細胞癌、ネフローゼ症候群、甲状腺機能亢進症、糖尿病、肥満、高リポ蛋白血症、喘息、遺伝性高コリンエステラーゼ
低値を示す病態
慢性肝炎、肝硬変、劇症肝炎、肝膿瘍、肝癌、膵癌、白血病、有機リン系中毒、血清コリンエステラーゼ異常症、妊娠中毒症、消耗性疾患、栄養失調
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