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抗リン脂質症候群(APS)の血栓形成機序は十分に解明されていませんが、抗リン脂質抗体(aPL)が凝固亢進に関与していることは疑いないことで、現在のところ2つの機序が考えられています。
1)aPLがリン脂質結合蛋白質を介してリン脂質に結合する際に、リン脂質結合蛋白質の持つ凝固線溶活性に影響を与える。
2)aPLがリン脂質結合蛋白質を介して血管内皮細胞や末梢血単球細胞の膜に結合する際に、向凝固活性を有する因子のm-RNAの発現に影響を与える。
1)の可能性では、β2グリコプロテイン1抗体(β2GP1)は、リン脂質膜を阻害することによりプロテインC活性を抑制する作用を有しており、aβ2GP1はその作用を増強し、プロテインC活性を抑制します。結果として、易血栓性が生じる可能性が報告されています。また、β2GP1はフォンウィルブランド因子を抑制しており、抗β2グリコプロテイン1抗体(aβ2GP1)はその作用を阻害します。結果として血小板活性化に伴う易血栓性の環境を形成するとの報告もあります。
2)の機序はAPSの血栓機序として有力です。β2GP1がβ2GP1を介して細胞膜に結合すると、細胞内の組織因子のm-RNAが増加する事がin vitroで証明されており、β2GP1が組織因子増加のシグナルを細胞内に挿入したものと考えられます。組織因子の増加が外因系凝固反応を促進し、血栓形成に至ることが考えられています。
これらの推定されている血栓機序が同時に存在することにより、APSではより強い易血栓性の環境が形成されると推察されます。
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