Asp f1(アスペルギルス由来)は、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(allergic bronchopulmonary aspergillosis:ABPA)の診断補助に有用な検査です。アスペルギルスは自然界に広く存在しているカビ(真菌)の一種です。通常は人に対して病気の原因とはなりにくい菌ですが、免疫力が低下している人や肺に空洞性の病変がある人では菌を吸い込むことで肺の感染症を引き起こします。またアスペルギルスに対してアレルギーを持っている場合も菌を吸い込むことでアレルギー反応による病気を発症します。
アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)は、重症喘息の中に潜在している例も多く、再発を繰り返すと線維化から呼吸不全に至ることもあり、早期の診断と治療が大切な疾患です。
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過敏性肺炎は、環境中の特定の抗原を繰り返し吸入することによって起こるIII型およびIV型アレルギー反応に基づく間質性肺炎の病型の1つです。その臨床像から急性と慢性に分類され、急性過敏性肺炎は抗原曝露後4〜12時間で、せき・息切れ・発熱・全身倦怠感などの症状を呈します。
一方、慢性過敏性肺炎は急性症状を認めることは稀であり、数ヶ月から数年間にわたり、せき・労作時呼吸困難・全身倦怠感・食欲不振・体重減少などを呈します。いずれの場合でも過敏性肺炎の治療には、早期の原因特定と徹底的な抗原回避が重要と考えられています。
新しいABPM臨床診断基準では、原因真菌の検索に特異的IgE検査が明記されています。検査法や検査の種類によってはABPA症例においてもアスペルギルス特異的IgEの抗体価が陰性になる事例も報告されています。また、特異的IgEのアレルゲンであるアスペルギルスの粗抽出物は真菌種間の交差抗原性が強く、粗抗原に対する特異的IgE陽性は必ずしもアスペルギルスへの感作を示しません。この問題を解決するためにアスペルギルスに特異的なアレルゲンコンポーネントであるAspf1およびAspf2に対する特異的IgE検査が有用とされていますが、いずれの検査も保険適用になっていません。
アレルギー性気管支肺真菌症(allergic bronchopulmonary mycosis:ABPM)は、主に成人喘息患者あるいは嚢胞性線維症患者の気道に発芽・腐生した真菌が、気道内でI型アレルギーとIII型アレルギー反応を誘発して発症する慢性気道疾患です。わが国ではAspergillus fumigatus(アスペルギルス・フミガーツス)が原因となることが多く、その場合はアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(allergic bronchopulmonary aspergillosisi:ABPA)と呼ばれています。
ABPM研究班によって作成された新ABPM臨床診断基準
1)喘息の既往あるいは喘息様症状あり
2)末梢血好酸球数(ピーク時)500/μL以上
3)血清総IgE値(ピーク時)417IU/mL以上
4)糸状菌に対する即時性皮膚反応あるいは特異的IgE陽性
5)糸状菌に対する沈降抗体あるいは特異的IgE陽性
6)喀痰・気管支洗浄液で糸状菌培養陽性
7)粘液栓内の糸状菌染色陽性
8)CTで中枢性気管支拡張
9)粘液栓喀痰の既往あるいはCT・気管支鏡で中枢気管支内粘液栓あり
10)CTで粘液栓の濃度上昇(high attenuation mucus:HAM)
イエダニは、世界全域で最も一般的なアレルゲンのひとつです。ヤケヒョウヒダニ(Dermatophagoides pteronyssinus)、コナヒョウヒダニ(D. farinae)はアレルゲン検査可能なダニです。
およびデルマトファゴイデス・ミクロセラス(D. microceras)は、同じ地域に見られますが、その分布の総体比率は地域によって異なります。
ダニの寿命は約2〜3ヵ月で、大きさは0.3mm程度です。ダニは家の中の細かい埃の中に生息し、温かく、湿度の高い場所を好みます。ダニの糞はアレルギーの最大原因と考えられており、花粉粒ほどの大きさであるため、空気中に浮遊しやすく、肺胞にまで進入するといわれています。
生体物質、特にヒトの皮膚やふけなどを含む埃、カーペット、枕、マットレスおよび布張りの椅子は、イエダニの温床となります。
ゴキブリ特異的IgE抗体は、喘息およびその他のアレルギー疾患を持つ患者の多くに認められます。 代表的なゴキブリはチャバネゴキブリとワモンゴキブリです。ゴキブリは湿度が高く、温かい環境を好み、乾燥した高度の高い地域にはめったに見られないとされています。
チャバネゴキブリは、小型のゴキブリで、体長約2cmとなり、世界中の至るところに見られます。 成虫には羽根がありますが、飛ぶことはめったにありません。幼虫は成虫より色が濃く、羽根はありません。
アスペルギルス(Aspergillus fumigatus)は、熱に強い真菌で世界的にも広く分布しています。増殖に適した温度域が幅広いので、生息環境は恒常的な高温域のみに限定されません。アスペルギルスは土壌中に広く分布しており、他の真菌アレルゲンと比べて、空気中の胞子の濃度は低とされています。冬でも堆肥にした植物の残渣や湿気を多く含んだ干し草や、ワラの山の内部で自己発熱が起こり、その結果多数の胞子が増殖して空気中に移行するので、局所的に胞子数が増えます。
ファディアトープはアトピー鑑別試験ともいわれ、吸入抗原に感作されているかをスクリーニングする検査です。花粉症に代表されるアレルギー患者は、年々増加していますが、原因となる吸入物質には、春先のスギ、ヒノキ、これに引き続いて現れる各種雑草、イネ科の花粉に加え、一年中みられるハウスダスト、ダニや、イヌやネコをはじめとするペットのフケ、真菌など、アレルゲンの種類は豊富であり、季節や地域、患者の年齢で差異が認められます。
診断には、吸入アレルゲンに感作されているかを知る必要がありますが、アレルゲンの項目数は多岐に渡るため、特異的IgEでは適切な選択が難しい場合もあります。そこでこれらを一括し、まず吸入抗原に感作されているかをスクリーニングする検査がIgEファディアトープです。
生活環境には多種類の真菌類(カビ)が存在し、様々なアレルギー症状を起こすことが知られています。アレルギー症状の原因となる真菌は大きく分けて、室内外の環境中に存在する空中真菌と、ヒトの皮膚に常在する寄生菌があります。
寄生菌は、カンジダ、ピティロスポリウム、トリコフィトンなどの真菌が知られています。これらの真菌に対する特異IgE抗体はアトピー性皮膚炎患者で高率に検出され、重症度にともない高値の傾向を示すことから、アトピー性皮膚炎の重症化に関与していると考えられています。また、屋内空中、湿性環境、寝具などにもこれらの真菌が認められます。
これら真菌のほか、アトピー性皮膚炎患者の皮膚に定着する黄色ブドウ球菌も、アトピー性皮膚炎の重症化、発症に関与すると考えられます。
生活環境には多種類の真菌類が存在し、様々なアレルギー症状を起こすことが知られています。アレルギー症状の原因となる真菌は大きく分けて、室内外の環境中に存在する空中真菌と、ヒトの皮膚に常在する寄生菌があります。
空中真菌の発生しやすい環境は、(1)高湿、(2)20-30℃の温度、(3)有機物の多い汚れ、(4)長期間利用のない場所、(5)空気の滞留する場所、(6)ホコリの多い場所、(7)結露した場所等があげられます。
近年、住居の気密性が高くなったために湿度が高くなり、カビが発生しやすい環境となっています。空中真菌の発生時期は、室内外ともに4月から11月で、5-7月の梅雨時期と9-10月の秋期をピークとし、冬期は少ないとされています。
空中真菌の胞子は5μm前後で、多くが下気道まで到達するため気管支喘息、過敏性肺炎などの原因となりますが、胞子が大きいアルテルナリアなどは鼻にも沈着することからアレルギー性鼻炎の原因にもなります。