アレルギーの原因の最近のブログ記事

多くの動物種において好塩基球が存在し、進化の過程で保存されたという経緯を鑑みると、好塩基球が元来アレルギーを引き起こすために存在するとは考えにくく、生体にとって有利な反応を導く存在であると考えるのが自然です。
寄生虫感染では、血清IgE値の上昇や好酸球浸潤を含むTh2型免疫反応が強く誘導され、血中の好塩基球増多や寄生虫感染局所への好塩基球浸潤もしばしば観察されます。しかし、好塩基球が寄生虫排除に寄与するという直接的な根拠はこれまで示されていません。最近の研究で外部寄生虫の1種であるマダニに対する生体防御に好塩基球が大きな役割を果たすことが明らかになりました。

近年の研究で、好塩基球が急性アレルギー反応である全身性アナフィラキシーの誘導にも重要な役割を果たしていることが明らかになりました。
アナフィラキシーは、急激な血圧・体温低下・呼吸困難・意識障害をきたす全身性の重篤なアレルギー反応であり、この反応はIgE、肥満細胞、ヒスタミンを介する誘導経路が昔からよく知られています。ところが、さまざまな動物実験モデルの解析から、この古典的経路では説明できない肥満細胞比依存的なアナフィラキシーが存在し、これにはIgEではなくIgGを介する誘導経路が重要であることが明らかになりました(IgG依存性アナフィラキシー)。

好塩基球は慢性アレルギー炎症を誘導・憎悪させる”悪玉細胞”であると考えられていましたが、最近好塩基球が慢性アレルギー炎症を抑制する”善玉細胞”としての機能を合わせもつことが明らかになりました。好塩基球は単球のマクロファージへの分化を抑制することで、慢性アレルギー炎症を抑制することもできます。
単球は血中から皮膚などの抹消組織に入るとマクロファージへと分化します。マクロファージにはM1型、M2型といった2つのタイプが存在し、一般にM1型マクロファージは炎症の誘導や憎悪に寄与するのに対し、M2型マクロファージは炎症の抑制や組織の修復・恒常性維持にかかわることが知られています。

IgE依存性慢性アレルギー炎症(IgE-mediated chronic allergic inflammaition:IgE-CAI)※1は、あらかじめマウスに抗原特異的なIgEを静脈内投与
(受動感作)しておき、後から抗原を耳介に皮内投与することで誘導できるマウス皮膚アレルギー炎症モデルです。
抗原を投与すると、まず2相性の即時型耳介腫脹(30分以内に起こる第1相と6〜10時間後に起こる第2相)が認められます。その後さらに観察を続けると、3〜4日後をピークとする強い遅発型耳介腫脹(第3相)が出現します。
病理組織像は好酸球・好中球浸潤や表皮の角化・肥厚といった慢性アレルギー炎症の様相を呈し、一連の遅発型反応はIgEと抗原に依存的なことから、これをIgE-CAIと定義しました。当初の予想に反して、この慢性アレルギー炎症は肥満細胞欠損マウスやT細胞欠損マウスでも誘導されることから、肥満細胞やT細胞とは異なる細胞が責任細胞であることが強く示唆されます。

好塩基球はその名が示す通り、塩基性色素で好染される顆粒をもつ顆粒球の1種で、抹消血白血球のうちわずか0.5%ほどしか存在しません。1879年ドイツの免疫学者によって発見され、アレルギー病変や寄生虫感染局所で好塩基球の集積が観察されることから、これまでこれらの疾患への関与が示唆されてきました。しかしながら、希少な細胞集団であることや、疾患モデル動物として有用なマウスにおいて、従来法(ギムザ染色など)による好塩基球の同定がこんなんであることが大きな支障となり、好塩基球の研究は後れをとってきました。また、高親和性免疫グロブリンE受容体(high-affinity igEreceptor:FcεRI)を発現し、ヒスタミンなどのケミカルメディエーターを放出する点で、抹消組織に常在する肥満細胞と共通項をもつことから、好塩基球は”血中循環型肥満細胞”と揶揄され、肥満細胞のバックアップ的存在とみなされてきました。

アレルギー疾患別の注意すべき原因アレルゲンには次のようなものがあります。
●アレルギー性鼻炎
通年性の症状のある場合、ダニ・ハウスダスト・ペットの毛や皮屑(フケ)・真菌(カビ)などが原因の可能性があります。季節性の症状がある場合、花粉症の疑いがあります。植物の花粉飛散の時期と症状を考慮して検査をおこなうことが重要です。

●気管支喘息
乳児期〜学童期にかけては食物アレルゲン(卵・牛乳・小麦・ピーナッツ・米・大豆など)やダニ・ハウスダスト・ペットの毛や皮屑(フケ)・真菌(カビ)などの吸入アレルゲンが重要です。また最近ではスギやカモガヤなどの花粉アレルゲンも関与が報告されています。

シックハウス症候群

住居内での室内空気汚染に由来する様々な健康障害を総称して、シックハウス症候群と呼びます。住宅の高気密・高断熱化が進み、新建材と呼ばれる化学物質を含有した建材を多く用いたことにより、室内空気が化学物質などに汚染され、そこに住まう人の健康に悪影響を与えてしまいます。

シックハウス症候群は原因も症状も多種多様で、ひとつの原因やひとつの症状、ある一面からの定義だけでは正しく理解することができません。発症のメカニズムなど、まだまだ未解明な部分も多くあります。最近では、学校の室内空気汚染による健康障害として「シックスクール」も問題化しています。

●シックハウス症候群の原因
シックハウス症候群というと、新築やリフォームをしたときだけの問題で、住宅を建てるときに使用される建材からの化学物質だけが原因と思われがちですが、建材以外にもカーテンやじゅうたん、家具などから揮発する化学物質や、日常生活用品、ダニやカビなど様々な原因によって室内空気が汚染されています。

ラテックスアレルギー

80年代後半から天然ゴム製品に対する即時型アレルギー反応が各国で報告され始め、ラテックスアレルギーと呼ばれるようになりました。原因となる天然ゴム製品には航空機用タイヤ、トラック及びバス用タイヤ、ゴムベルト、履き物、糸ゴム、粘接着剤、輪ゴム、医療用製品などがあります。
このアレルギー反応のハイリスクグループはおもに職業的に天然ゴム製手袋を常用する医師や看護師で、5〜15%の人がIgE抗体陽性であるとも報告されています。さらに、ゴム手袋に塗布されているパウダーやゴムタイヤの磨耗紛がラテックス抗原を伴って飛散していることから、こうした微粒子の吸入が重要な曝露経路の一つであると指摘されています。

アレルギー症状としては接触じんま疹など比較的軽いものが多いのですが、全身性じんま疹やアナフィラキシーショックに発展する場合もあり、アメリカでは死亡例が報告されています。

アトピーの遺伝子的背景

21世紀の国民病といわれるアトピー性疾患は、羅患者も多く(喘息5〜10%、アトピー性皮膚炎20%、花粉症30%)その対策は急務です。アレルギー(アトピー)は、普遍的な抗原(室内塵、動物の毛や花粉)に対してIgE抗体を作りやすい体質と定義され、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、結膜炎などがアトピー性疾患の代表です。

人間には、内部に侵入しようとするものを排除する機構(免疫機能)があります。具体的には、細菌・ウィルスなどから身体を守るためのシステムであり、私たちが健康に暮らしていくために必要不可欠のものです。しかし、アレルギー疾患の患者では、本来は無害であるはずのダニや花粉(これらはヒトにや対する感染性がない)に対して、免疫システムが過剰反応して「アレルギー反応」を引き起こします。

これらの疾患の共通点として、1)IgEが上昇することが多い、2)組織(喘息では気道、花粉症では鼻粘膜、アトピー性皮膚炎では皮膚)に好酸球やTリンパ球、肥満細胞などの浸潤が認められる、などが挙げられます。


アレルギー症状を引き起こす原因となるものを「アレルゲン」といい現在、検査可能なアレルゲンは200種類以上あります。その主なものは、以下のように分類されます。

・吸入性アレルゲン
<花粉>
1)イネ科植物
カモガヤ、ハルガヤ、オオアワガエリ、ギョウギシバ、ナガハグサ、オオスズメノテッポウ、ヒロハウシノケグサ、ホソムギ、アシ、コヌカグサ(属)、セイバンモロコシ、小麦(属)、スズメノヒエ(属)
2)雑草
ブタクサ、ヨモギ、カナムグラ、アキノキリンソウ、タンポポ(属)、ブタクサモドキ、オオブタクサ、ニガヨモギ、フランスギク、ヘラオオバコ、シロザ、ヒメスイバ、イラクサ(属)
3)樹木
スギ、ヒノキ、ハンノキ(属)、シラカンバ(属)ビャクシン(属)、マツ(属)、カエデ(属)、ブナ(属)、コナラ(属)、ニレ(属)、オリーブ、クルミ(属)、ヤナギ(属)、アカシア(属)、クワ(属)

<花粉以外>
1)室内塵
ハウスダスト1、ハウスダスト2
2)ダニ
ヤケヒョウヒダニ、コナヒョウヒダニ、アシブトコナダニ、サヤアシニクダニ、ケナガコナダニ
3)真菌
カンジダ、ピティロスポリウム、ビール酵母、ペニシリウム、クラドスポリウム、アスペルギルス、ムコール、アルテルナリア、ヘルミントスポリウム、トリコフィトン
4)細菌
黄色ブドウ球菌A、黄色ブドウ球菌B
5)動物
ネコ皮屑、イヌ皮屑、ハムスター上皮、モルモット上皮、家兎上皮、ラット、マウス、セキセイインコ羽毛、セキセイインコのふん、セキセイインコ血清蛋白、ニワトリ羽毛、ガチョウ羽毛、アヒル羽毛、ハトのふん、ウマ皮屑、ウシ皮屑、ヤギ上皮、羊上皮、豚上皮
6)職業性
絹、ホルマリン、ラテックス、オオバコ種子、イソシアネート、エチレンオキサイド、無水フタル酸、綿

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