2022年7月アーカイブ

体表全体を覆う皮膚は、成人で面積が約1.6m2、重量は全体重の16%を占めている人体で最大の臓器です。皮膚のマイクロバイオームを考えるうえで重要なのはその基本構造と、腸管とは異なる透過性です。皮膚の表面には汗管が直接開口し、汗が分泌されます。汗の99%は水で、塩化物と乳酸・尿素などの老廃物、抗菌ペプチドなどを含んでいます。一方、毛穴に開口する脂腺からは脂質が分泌され、トリグリセリドは毛包内に存在している細菌などが出すリパーゼで分解され、遊離脂肪酸として分泌されます。これらの脂質で構成される酸性の皮表脂質フィルムは、外界からの化学物質の干渉作用や感染の防御に働くと考えられています。さらに表皮では、角質細胞がレンガ状に積み重なっていて、ヒトの表皮は外界からの物理的な刺激に耐え、病原体やアレルゲンの侵入を防ぐために二重のバリアを備えています。角質の隙間を埋める細胞間脂質からなる角質バリアと細胞間の隙間をシールするタイトジャンクションからなるバリアです。このようなバリアを透過できる分子は、おおよそ分子量が500Da以下の分子に限定されます。500Daの分子はおおよそ1.3nm以下となるため、皮膚細菌、蛋白などが定常状態で直接真皮に透過することはありません。

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