アレルギーにおける好塩基球の役割

好塩基球はその名が示す通り、塩基性色素で好染される顆粒をもつ顆粒球の1種で、抹消血白血球のうちわずか0.5%ほどしか存在しません。1879年ドイツの免疫学者によって発見され、アレルギー病変や寄生虫感染局所で好塩基球の集積が観察されることから、これまでこれらの疾患への関与が示唆されてきました。しかしながら、希少な細胞集団であることや、疾患モデル動物として有用なマウスにおいて、従来法(ギムザ染色など)による好塩基球の同定がこんなんであることが大きな支障となり、好塩基球の研究は後れをとってきました。また、高親和性免疫グロブリンE受容体(high-affinity igEreceptor:FcεRI)を発現し、ヒスタミンなどのケミカルメディエーターを放出する点で、抹消組織に常在する肥満細胞と共通項をもつことから、好塩基球は”血中循環型肥満細胞”と揶揄され、肥満細胞のバックアップ的存在とみなされてきました。

1990年代に好塩基球は活性化すると即座に2型ヘルパーT細胞(type2 helper T cell:Th2)型サイトカインであるインターロイキン4(IL-4)を大量に放出することが報告され、Th2型免疫反応を誘導する細胞として一気に注目を浴びるようになります。また、近年次々と開発される画期的な解析ツールを用いることで、アレルギー炎症や寄生虫感染防御において肥満細胞とは異なる好塩基球固有の役割が明らかとなり、肥満細胞の脇役として捉えられてきた好塩基球は免疫システムのキープレイヤーとして認識されるようになりました。

このブログ記事について

このページは、が2022年6月 5日 14:31に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「皮膚マイクロバイオーム解析」です。

次のブログ記事は「好塩基球の役割 IgE依存性慢性アレルギー炎症」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。