アトピー性皮膚炎と皮膚マイクロバイオーム

アトピー性皮膚炎は乳児期以降に発症する強いかゆみと慢性湿疹を特徴とするTH2型の皮膚炎です。アトピー性皮膚炎になぜ特異的に黄色ブドウ球菌が生着・増殖するのかは、マイクロバイオーム研究が盛んになる以前、かなり古くから知られています。このように正常なマイクロバイオームが乱れることをdysbiosisといいます。アトピー性皮膚炎でdysbiosisが起こる原因として、抗菌ペプチドの発現が滅弱していることが、黄色ブドウ球菌の生着に影響しているのではないかと考えられていますが、いまだ詳細は不明です。

黄色ブドウ球菌のPSMファミリー病原因子の発現がアトピー性皮膚炎の皮疹の憎悪因子の一つであることが見いだされ、これらの毒素は、自身の生息密度感知して遺伝子を制御するクオラムセンシングにより調節を受けています。バクテリアの細胞間コミュニケーションで有名なのが、クオラムセンシングと呼ばれる同種菌の生息密度を感知する機構です。黄色ブドウ球菌ののクオラムセンシングでは、オートインデューサーと呼ばれるフェロモン様の物質を細胞外に分泌し、自身で感知することで、その生息密度を把握します。また、乳児コホート研究の解析結果からは、健常な皮膚では、黄色ブドウ球菌のクオラムセンシングを変異によって機能喪失させることにより、この細菌を排除していることが明らかになっています。このような皮膚マイクロバイオームの研究から、アトピー性皮膚炎の治療法の開発も試みられています。

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このページは、が2022年4月28日 01:14に書いたブログ記事です。

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