ABPM診療におけるアレルゲンコンポーネント特異的IgE検査

新しいABPM臨床診断基準では、原因真菌の検索に特異的IgE検査が明記されています。検査法や検査の種類によってはABPA症例においてもアスペルギルス特異的IgEの抗体価が陰性になる事例も報告されています。また、特異的IgEのアレルゲンであるアスペルギルスの粗抽出物は真菌種間の交差抗原性が強く、粗抗原に対する特異的IgE陽性は必ずしもアスペルギルスへの感作を示しません。この問題を解決するためにアスペルギルスに特異的なアレルゲンコンポーネントであるAspf1およびAspf2に対する特異的IgE検査が有用とされていますが、いずれの検査も保険適用になっていません。

ABPM/ABPAは放置すると、広範囲の気管支拡張・肺の線維化・嚢胞形成、ひいては呼吸不全・胚性心に至ることもあるので、アスペルギルスへの感作が確認された場合ABPM/ABPAの可能性を疑い、積極的にCT検査や沈降抗体検査を進めていく必要があります。
また、元々は真菌感作陰性あるいは非アトピー型喘息患者においても、長期管理中にアスペルギルスなどの真菌に新規感作する場合があるとの報告もあります。定期的(数年に一度)、あるいは喘息のコントロールが不良となり症状が憎悪したときには、アスペルギルスを中心とした真菌に対する特異的IgE検査を行い、アレルゲン感作状況の再評価が推奨されます。

真菌セットの例:アスペルギルス、カンジダ、ぺニシリウム、アルテルナリア、クラドスポリウム、トリコフィトン

※用語説明
・アレルゲンコンポーネント
アレルゲンには多数の蛋白質が含まれていて、特異IgEは個々の蛋白質と反応します。特異IgEと反応し、アレルゲン活性を有する蛋白質のことをアレルゲンコンポーネントといいます。
・ABPM:アレルギー性気管支肺真菌症(allergic bronchopulmonary mycosis:ABPM)
・ABPA:アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(allergic bronchopulmonary aspergillosisi:ABPA)

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このページは、が2020年10月15日 23:04に書いたブログ記事です。

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