アレルギーと誤診されやすいジアノッティ症候群とは

ジアノッティ症候群は、顔面、四肢末端などに丘疹を生じるウイルス感染症です。様々なウイルスが関係しているといわれています。
わが国では肝炎ウイルスによるものをジアノッティ病、そのほかのものをジアノッティ症候群と呼んでいますが、国際的には肝炎ウイルスによるものも含めてジアノッティ症候群に統一されています。
診断は臨床所見のみでされることが多く、原因ウイルスの精査については保険診療の範囲外となっています。
自然治癒するのですが、保護者はかなり不安になるので、的確な診断と安心感を与える態度が医師には求められます。

・臨床症状
1)幅広い年齢に発症するものの、1歳前頃の小児に好発します。下肢に独特の丘疹が出現し、上行性に顔面に達します。個々の丘疹は3〜4mm大。顔面では癒合傾向が強く、患者によっては手背にもべったりとした紅斑が出現します。しかし一部に出現するなど、必ずしも典型的でない場合も多いようです。
2)軽い?痒感を生じる。リンパ節腫脹もありますが患児はいたって元気。
3)手掌足底に紅斑を生じることは少ない。たまに「砂かぶれ」との鑑別が問題となります。

・鑑別診断と注意点
1)発症部位
ほぼ左右対称な病変は、発疹の原因となる「何か」が血行性に伝搬して生じている、あるいは全身のアレルギー反応など、何かが同時に生じていてそれの単なる反映と判断します。
2)形態
個々の発疹が丘疹なのか紅斑なのか、隆起はあるのかを見ます。ジアノッティ症候群の発疹は主に「丘疹」ですが、癒合すると鑑別が難しいのですが注意して見ると1個1個は丘疹になっています。盛り上がりのある小さな赤い隆起かどうかが重要です。
3)鱗屑・痂疲があるか
接触皮膚炎は外界からの刺激が原因となるので、角質など表面の変化が目立とます。それに比し、ジアノッティ症候群や伝染性紅斑などウイルスによるものは、鱗屑や痂疲がほとんど目立ちません。もちろんウイルスにより表皮の変化が生じて鱗屑などを伴う場合もあるので、これだけで断定はできません。
4)掻痒感
痒いか痒くないかは、とても重要です。掻痒なし、あるいは軽度だと、ウイルス感染、薬疹、自己免疫疾患、代謝異常症、血管炎などを考慮します。例外はありますが、ウイルス感染で激しい掻痒を感じることはあまりありません。

・検査所見・原因ウイルス
「ジアノッティ症候群」と「ジアノッティ病」の区別は困難です。B型肝炎ウイルス(HBV)の感染か否かは通常のB型肝炎の所見を確認すればよいのですが、HBウイルス感染によるものは極めてまれです。ジアノッティ症候群はエプスタイン・バー・ウイルス(EBV)感染によるものが非常に多いとされています。
EBVといえば、伝染性単核球症が有名です。思春期以降、EBVに初感染することで発症します。一方で小児、特に3歳頃までのEBV感染は、このジアノッティ症候群として発症すると考えてよい。年齢によって臨床像が異なるため、同じウイルスでも別の疾患名が付けられてしまいます。
ジアノッティ症候群は別のウイルスでも生じます。サイトメガロウイルス、コクサッキーウイルスA16(CA16)、エコーウイルスなど。ジアノッティ症候群を何回も発症してしまう小児もいます。

・治療
痒みが強いときは抗ヒスタミン薬の内服(オロパタジン[商品名アレロック顆粒他]など)や外用(ジフェンヒドラミン[レスタミンコーワクリーム他]など)を行います。

・経過・予後・日常生活指導
感染力はさほど強くなく、集団発生などの心配は不要です。保育園・幼稚園・学校は特に制限する必要はありませんが、調子が悪そうだ、あるいは発熱している、などの場合や顔面の紅斑が顕著、あるいはあまりに激しい紅斑・丘疹が生じた場合は、お休みさせた方がよさそうです。

このブログ記事について

このページは、が2020年7月18日 23:24に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「TARC値 アトピー性皮膚炎の治療法選択に反映」です。

次のブログ記事は「アレルギー性気管支肺真菌症 ABPM診断基準」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。