1)ペリオスチン
ペリオスチンは、ヒトのPOSTN遺伝子にコードされた細胞外マトリックス(extra cellulare matrix:ECM)蛋白で、細胞接着や細胞増殖に関与します。気管支喘息において、IL-4、IL-13はその病態形成に中心的な役割を果たすTh2サイトカインです。ペリオスチンはIL-4とIL-13などの作用で増加し、気管支喘息患者の気道上皮細胞において高発現していることが知られています。気管支喘息では、アレルギー性気道炎症により気道の不可逆的な構造改変(気道リモデリング)をきたしますが、その1つである気道上皮下の基底膜肥厚にペリオスチンが関与しているとの報告があります。
また、気管支喘息患者において、血清ペリオスチン値は好酸球性気道炎症のマーカーとして有用であることや、血清ペリオスチン高値は呼吸機能検査における1秒率の経年的低下と関連することも報告されています。喘息治療において、抗IL-13抗体(レブリズマブ)は、吸入ステロイドと気管支拡張剤の併用治療でコントロールが不十分な患者において臨床的改善をもたらしますが、血清ペリオスチン値が高い喘息患者においてレブリズマブがより有効であることが示されています。これらから気管支喘息において血清ペリオスチンは重症度評価や治療反応性の予測における新たなバイオマーカーとしての有用性が期待されています。
アトピー性皮膚炎患者では、IL-4やIL-13の刺激によりペリオスチンが産生されて皮膚組織に沈着します。ペリオスチンは細胞表面に存在するインテグリンに結合して炎症性メディエーターを細胞に産生させ、アトピー性皮膚炎の慢性化の原因になっていることが示され、アトピー性皮膚炎における新たな治療ターゲットとしても期待されています。
2)呼気NO(一酸化窒素)測定
気管支喘息では、気道における好酸球性炎症によって誘導型一酸化窒素合成酵素(inducible nitric oxide synthase:iNOS)が発現し、NO産生が更新します。呼気一酸化窒素測定(fraction of exhaled nitric oxide:FeNO)は、非侵襲的に下気道における好酸球浸潤(炎症)を検出する検査として2013年6月より保険収載されています。
FeNOは、気道粘膜の好酸球浸潤、気管支肺胞洗浄液中の好酸球比率、気道過敏性と相関することが知られており、特に気管支喘息の診断の有用性が示されています。また各種異なる呼気流速におけるNO測定を用いて、中枢気道由来NOと末梢気道/肺胞由来NOに分けて算出することができます。また、安定期気管支喘息患者において、末梢気道/肺胞由来NOは、呼吸機能検査における末梢気流制限の指標とされるFEF(forced expiratory flow)25-75、FEF50と有意な相関を示すことが報告され、末梢気道/肺胞由来NO濃度の測定により、喘息患者における末梢気道病変を非侵襲的に検出できる可能性が示されました。
バイオマーカー:ある疾病の 存在や進行度をその濃度に反映し、血液中に測定されるタンパク質等の物質を指す