I型アレルギー性炎症マーカー ケモカイン

ケモカインとは細胞に遊走をもたらすサイトカインの総称です。分子内のシステイン残基のならび方によって、CXC、CCR、C、CX3Cケモカインの4つに大別されます。また、おのおののケモカインの受容体はCXCR、CCR、XCR、CX3CRと呼ばれており、Th1細胞やTh2細胞などに特異的に発現するものが知られています。ケモカインは種々のI型アレルギー性疾患の病態形成へ関与することが知られており、即時型アレルギー反応を直接評価するものではないものの、それらのいくつかは疾患の鑑別、重症度の評価における有用性が報告され、バイオマーカーとして臨床で用いられています。

1)TARC
TARC(thymus and activation-regulated chemokine) は、CCケモカインの一種で、CCL17とも呼ばれ、分子量8〜14kDaの分泌型低分子蛋白質です。
アトピー性皮膚炎(AD)は、増悪・寛解を繰り返す、掻痒のある湿疹を主病変とする疾患です。TARCはADにおいて、その受容体であるCCR4を特異的に発現するリンパ球、Th2細胞の浸潤に大きな役割を担っています。AD患者では、皮膚の表皮角化細胞や末梢血のリンパ球において、TARCの産生が亢進しており、CCR4を発現したTh2細胞を皮膚へと遊走させることで、いっそうの病態悪化をもたらすと考えられています。

TARCに関する多施設臨床研究によれば、血中のTARC濃度は、AD患者の皮疹の範囲や程度(SCORAD)とよく相関します。従来指標として用いられてきた非特異的IgE値や好酸球数、LDH値と比べ感度が高く、重症症例での上昇幅が大きいとされています。
日本皮膚科学会によるアトピー性皮膚炎診療ガイドライン(日皮会誌、2008年)によれば、AD診断は掻痒症状や特徴的皮疹の分布、臨床経過を含め総合的に診断されるべきとされていますが、TARCは客観的な診断指標としての有用性が評価されつつあります。難治性疾患であるADにはコントロール指標となりうる血中マーカーが望まれていますが、TARCがその役を担うものとして期待されています。
なおTARCは比較的特異性の高いADのマーカーとされていますが、自己免疫性疾患である水疱性類天疱瘡やリンパ腫の一つである菌状息肉症でも上昇することも報告されています。

基準値:単位(pg/mL)
 小児(6〜12ヶ月) 1367 未満
 小児(1〜2歳) 998 未満
 小児(2歳以上) 743 未満
 成人 450 未満

2)eotaxin エオタキシン
eotaxin-1(CCL11)、eotaxin-2(CCL24)、eotaxin-3(CCL26)はともにCCR3のみに結合する特異性リガンドで、CCR3は好酸球、好塩基球に発現しており、eotaxinは好酸球遊走因子として知られています。アトピー性皮膚炎患者においては、血清eotaxin-3の上昇や皮膚組織におけるeotaxin-3の高発現が報告されています。さらに、血清eotaxin-3は、アトピー性皮膚炎患者において疾患活動性、TARC、末梢血中の好酸球数と相関することが示されています。小児の食物アレルギー患者においては、血清eotaxin-1の上昇が報告されています。

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このページは、が2014年7月19日 23:59に書いたブログ記事です。

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