2014年7月アーカイブ

アレルギー関連検査

アレルギー疾患の原因アレルゲンの検索は、症状発現の予防と効果的治療のために重要です。アレルギーの症状が現れるようになったきっかけや、症状出現の状況、生活環境などを詳細に調べることが必須です。実際にはなかなか特定し難い場合が多く、食物アレルギーでは、家族や本人の普段から症状が出る前に食べたものの一覧や成分表などの記録も必要となります。
このような問診を行いある程度アレルゲンを絞り込み検査をします。アレルギー関連検査には次のものがあります。

気管支喘息,スパイロメトリー,ピークフロー
気管支喘息は呼吸機能を担う肺のアレルギー性炎症であり、気道過敏症や発作時の気道末梢の狭窄を特徴とします。そのため呼吸機能検査が診断に利用されます。
1)スパイロメトリー・フローボリューム
健常な成人では、努力呼出時の1秒率(forced expiretory volume in one second:FEV1)/努力肺活量(forced vital capacity:FVC)比が成人で80%未満、小児では90%未満のときには気流制限があると考えます。短時間作動性β2刺激薬の吸入後15〜20分後にFEV1が絶対量として200mLあるいは12%以上改善すれば喘息とします。

好酸球は本来、寄生虫による感染症で活躍する白血球ですが、肥満細胞や好塩基球のヒスタミン遊離を抑制する作用をもち、I型アレルギーで血中に増加することが知られています。
アレルギー性炎症は外界に接している皮膚や粘膜でおこります。したがって、アレルギー性鼻炎では鼻汁、結膜炎では涙、喘息では喀痰にアレルギー性炎症の“現場”が反映されています。鼻汁好酸球検査は、鼻汁をスライドグラスに塗布してHansel液やGiemsa液などで短時間染色して顕微鏡で好酸球の有無を調べます。涙液・喀痰中の好酸球も好酸球性炎症の証明となります。また、涙液中の好酸球顆粒蛋白ECP(eosinophil cationic protein)が結膜のアレルギー性炎症で高値となることが知られています。

I型アレルギーにおいて、好塩基球は肥満細胞とともに中心的役割を示し、また末梢血中に局在するため採取可能なエフェクター細胞です。ヒスタミン遊離試験(histamine releasing test:HRT)は、末梢血から磁性ビーズに結合させた好塩基球特異的抗体を用いて全血中の好塩基球を分離し、取り出した好塩基球をアレルゲンと反応させ、遊離したヒスタミン量を競合的ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)法により測定する検査です。すなわち、好塩基球からのヒスタミン遊離というI型アレルギーの最終的な段階まで再現する検査です。

実際に患者にアレルゲンを暴露して症状がでるかみる検査です。最も診断価値は高いのですが危険性もあります。眼粘膜誘発試験、鼻粘膜誘発試験、吸入誘発試験などがあります。時には生命に危険の及ぶ症状を誘発することもあり、患者に不利益が伴うので、不利益を上回る利益があると判断された場合に限り、準備を万全に整えて行います。

1)眼粘膜誘発試験
眼球結膜に抗原液を点眼し、結膜発赤と掻痒感が出現すれば陽性と診断します。

2)鼻粘膜誘発試験
抗原液を鼻粘膜に噴霧、もしくは直径3mmの一定濃度の抗原を含ませた濾紙を両下鼻甲介前端の粘膜下に置き、5〜10分後のくしゃみや鼻汁、鼻閉などの症状と鼻鏡所見(鼻粘膜腫脹)からアレルゲンを同定します。

ケモカインとは細胞に遊走をもたらすサイトカインの総称です。分子内のシステイン残基のならび方によって、CXC、CCR、C、CX3Cケモカインの4つに大別されます。また、おのおののケモカインの受容体はCXCR、CCR、XCR、CX3CRと呼ばれており、Th1細胞やTh2細胞などに特異的に発現するものが知られています。ケモカインは種々のI型アレルギー性疾患の病態形成へ関与することが知られており、即時型アレルギー反応を直接評価するものではないものの、それらのいくつかは疾患の鑑別、重症度の評価における有用性が報告され、バイオマーカーとして臨床で用いられています。

1)TARC
TARC(thymus and activation-regulated chemokine) は、CCケモカインの一種で、CCL17とも呼ばれ、分子量8〜14kDaの分泌型低分子蛋白質です。
アトピー性皮膚炎(AD)は、増悪・寛解を繰り返す、掻痒のある湿疹を主病変とする疾患です。TARCはADにおいて、その受容体であるCCR4を特異的に発現するリンパ球、Th2細胞の浸潤に大きな役割を担っています。AD患者では、皮膚の表皮角化細胞や末梢血のリンパ球において、TARCの産生が亢進しており、CCR4を発現したTh2細胞を皮膚へと遊走させることで、いっそうの病態悪化をもたらすと考えられています。

1)血中好酸球
好酸球はアレルギー疾患のほかにも、寄生虫疾患・アジソン病などで上昇するため、アレルギー疾患に特異的な検査ではありませんが、比較的簡単に得られる情報なので診療の参考になります。治療経過中モニターすることもありますが、臨床症状を鋭敏に反映するわけではありません。またステロイド全身投与では著明に減少します。

2)IgE(総IgE・特異的IgE)測定
IgEはI型(即時型)アレルギーに関与する免疫グロブリンで、分子量約19万の蛋白です。免疫グロブリンの中ではもっとも血中濃度が低く、消化管・気道粘膜・リンパ節等で産生され、血中での代謝半減期は約3日です。
アレルギー性鼻炎などと関わりが深く、1966年、アレルギー患者の血清中から発見されました。現在、臨床で測定されているIgEには、各アレルゲンに対し抗体活性を有する「特異的IgE抗体」と、抗体活性の明確ではないIgE全体の量としての「総IgE」があります。健常成人の総IgE基準範囲は、測定方法で若干の違いはありますが、170IU/mL以下であり、3歳で成人の60%程度、学童後期に成人レベルに達します。

1)ペリオスチン
ペリオスチンは、ヒトのPOSTN遺伝子にコードされた細胞外マトリックス(extra cellulare matrix:ECM)蛋白で、細胞接着や細胞増殖に関与します。気管支喘息において、IL-4、IL-13はその病態形成に中心的な役割を果たすTh2サイトカインです。ペリオスチンはIL-4とIL-13などの作用で増加し、気管支喘息患者の気道上皮細胞において高発現していることが知られています。気管支喘息では、アレルギー性気道炎症により気道の不可逆的な構造改変(気道リモデリング)をきたしますが、その1つである気道上皮下の基底膜肥厚にペリオスチンが関与しているとの報告があります。
また、気管支喘息患者において、血清ペリオスチン値は好酸球性気道炎症のマーカーとして有用であることや、血清ペリオスチン高値は呼吸機能検査における1秒率の経年的低下と関連することも報告されています。喘息治療において、抗IL-13抗体(レブリズマブ)は、吸入ステロイドと気管支拡張剤の併用治療でコントロールが不十分な患者において臨床的改善をもたらしますが、血清ペリオスチン値が高い喘息患者においてレブリズマブがより有効であることが示されています。これらから気管支喘息において血清ペリオスチンは重症度評価や治療反応性の予測における新たなバイオマーカーとしての有用性が期待されています。

皮膚試験はアレルゲンを皮膚に侵入させて反応を見る検査です。アレルゲンに曝露する皮膚組織の浅い順にパッチテスト、スクラッチ(またはブリック)テスト、皮内テストがあります。抗ヒスタミン剤やステロイド剤の影響を受ける場合があることに留意します。また、75歳以上の高齢者では陽性率は低下します。

1)パッチテスト(IV型アレルギー)
パッチテストはテスト用の絆創膏にアレルゲンエキスをたらして皮膚に貼り、かぶれが出るかを調べるもので皮膚は傷つけません。パッチテストは絆創膏を貼付後48時間後に除去し、30分後、72時間後、96時間後に判定し、IV型アレルギーの判定に用いられます。

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