アレルギー疾患 最近の動向

アレルギー の発症には、遺伝的素因、環境因子さらに性ホルモンおよびそれ以外の性差的な要素などが複雑に相互作用すると考えられています。熱帯地方では、IgE を介したマスト細胞や好塩基球の活性化、あるいは活性化された好酸球は、寄生虫感染に対する防御反応として作用します。一方で先進国では寄生虫感染は稀であり、IgEを介したアレルゲンに対する過敏反応が優位となります。
近年、日本も含め先進国において、とくに アレルギー疾患 の罹患率が増加傾向にあります。具体的には、ここ10年で 気管支喘息 は2〜3倍に増え、花粉症 を含む アレルギー性鼻炎 は30%増加しています。花粉飛散量の増加や乳児期におけるエンドトキシン暴露量の減量などの環境変化だけでなく、個々の環境に対する免疫学的な変化、すなわち免疫反応に関与する制御性T細胞の量的質的異常が、罹患率上昇に寄与していると考えられています。

罹患率の上昇とは逆行して、気管支喘息のコントロールは、吸入ステロイド薬の普及により改善の一途をたどっています。1978年にCFC−べクロメタゾン(アルデシン、ベコタイド)が国内最初の吸入ステロイド薬として発売され、さらに1998年から、より高い抗炎症効果が期待できるプロピオン酸フルチカゾン(フルタイド)が使用可能となりました。それ以降も数種類の新しい吸入ステロイド薬が開発され、ここ10年で喘息発作死は約1/2にまで減少し、近く2000人を下回る勢いです。
それを反映して、2000年頃をピークに喘息患者に対する医療費も緩やかですが減少傾向に転じています。一方、吸入ステロイド薬を含めた十分な治療の普及にもかかわらず、喘息発作死がいまだに2000例も存在するという見方もできます。特に女性に多く、成人重症喘息が女性に多いとされる報告と一致しています。
また、成人喘息において、ステロイド抵抗性を呈する難治性喘息の割合は全体の5%程度であるにもかかわらず、医療費の約50%を占めています。成人難治性喘息の他にも乳幼児喘息、成人アトピー性皮膚炎などの重症難治性のアレルギー疾患の存在が医療経済的にも大きな問題となっており、アレルギー疾患のさらなる病態解明そして新たな治療ターゲットの発見が求められています。

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このページは、が2012年12月11日 23:03に書いたブログ記事です。

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