2012年12月アーカイブ

気管支喘息と好酸球性中耳炎

好酸球性中耳炎は、気管支喘息患者における難治性中耳炎として報告され、その特徴は膠状の中耳貯留液に多数の好酸球が認められることです。診断の為には好酸球検査が必須となります。臨床的な特徴として次のものがあります。
・成人発症が多く、やや女性に多い
・局所は滲出性中耳炎または慢性中耳炎と同様の所見をとる
・鼓室内の肉芽は蒼白で耳茸を形成することもある
・気管支喘息、アスピリン喘息をきわめて高率に合併する
・好酸球が著明に浸潤した鼻茸を高率に合併する
・両側性の発症が多い
・伝音〜混合性難聴を呈し、未治療では進行が早い
・ときに急激な骨導閾値の上昇をきたすことがある
・手術により憎悪し聾となる症例もある

気管支喘息、特にアスピリン喘息を合併する患者で、副鼻腔粘膜・鼻茸への著しい好酸球浸潤が認められ、再発をきたす症例を好酸球性副鼻腔炎といいます。
好酸球性副鼻腔炎の臨床症状は以下のとおりです。
・成人発症
・両側性副鼻腔炎が大多数
・内視鏡検査で多発性ポリープが認められる
・副鼻腔に粘稠性分泌物が認められる
・ステロイド全身投与にて著効する
・手術後の経過不良を呈することが多い
・I型アレルギーの関与は問わない
・気管支喘息、アスピリン喘息、好酸球性中耳炎の合併
・自覚症状として病変が軽度でも臭覚障害が出現する
・CT画像上で上顎洞病変に比べて篩骨洞病変の程度が強い
・中鼻道粘膜表層ECP(eosinophil cationic protein)濃度高値や鼻汁中に多数の好酸球を認める
・血中好酸球数高値、血中ECP濃度が高値

薬物アレルギー の原因薬剤の同定には、皮膚テスト、薬物負荷テスト、血液検査があります。
1)皮膚テスト:薬物が反応すると浮腫による膨疹と毛細血管の拡張による紅斑・発赤がその周囲にできます。
・ブリックテスト:薬液をあらかじめ皮膚に滴下しておき、針で皮膚を薬液を通して血液が出ない程度に軽く掻き、15〜20分後に発赤・膨疹を判定します。即時型アレルギーの確認に有用。安全ですが偽陰性が多いため注意が必要です。
・スクラッチテスト(掻皮試験):1mm程度のごく小さい傷をつけ、アレルギー反応の原因となる薬物を付けて反応が起こるかどうかを判定します。
・皮内テスト:薬物を直接皮内に注射して反応をみます。ブリックテストの約1000倍の感度ですが、テスト自体でアナフィラキシーが誘発される可能性があります。
・パッチテスト:接触性皮膚炎に代表される遅延反応(IV型反応)の検査です。陽性率は高くないのですが、陽性の場合の診断価値は高いので有用です。固定薬疹のパッチテストでは、健常皮膚では通常陰性であり、皮疹が治癒したのちの色素沈着部で陽性になります。

薬物アレルギー は、体が薬物を異物として認識し、感作が成立することが発症の前提となります。薬物は抗血清や血液製剤などを除けば、低分子であるため薬物自体が抗原とはなりえません。低分子の薬物が抗原性を獲得するには、分子量1万以上の蛋白と結合する必要があるため、蛋白と結合しやすい薬物ほど薬物アレルギーを起しやすいといえます。
この場合、蛋白がキャリアー(carrier)となり、医薬品がハプテン(hapten、不完全抗原または部分抗原ともいう)となります。このハプテンにより感作リンパ球が産生され、免疫が成立します。ハプテンとなった医薬品が再度投与されると、過剰な免疫反応が起こり、免疫複合体の形成や化学伝達物質の放出、あるいは細胞や組織に対する障害などの過敏症が発現します。

アレルギー疾患 最近の動向

アレルギー の発症には、遺伝的素因、環境因子さらに性ホルモンおよびそれ以外の性差的な要素などが複雑に相互作用すると考えられています。熱帯地方では、IgE を介したマスト細胞や好塩基球の活性化、あるいは活性化された好酸球は、寄生虫感染に対する防御反応として作用します。一方で先進国では寄生虫感染は稀であり、IgEを介したアレルゲンに対する過敏反応が優位となります。
近年、日本も含め先進国において、とくに アレルギー疾患 の罹患率が増加傾向にあります。具体的には、ここ10年で 気管支喘息 は2〜3倍に増え、花粉症 を含む アレルギー性鼻炎 は30%増加しています。花粉飛散量の増加や乳児期におけるエンドトキシン暴露量の減量などの環境変化だけでなく、個々の環境に対する免疫学的な変化、すなわち免疫反応に関与する制御性T細胞の量的質的異常が、罹患率上昇に寄与していると考えられています。

新しい アレルギー の治療薬として注目すべきものは、ヒト化抗IgEモノクローナル抗体である オマリズマブ(ゾレア)です。遊離IgEのCε3部分と結合し、IgE抗体と細胞膜上に存在する高親和性受容体(FcεRI)の結合を阻害することで、マスト細胞などからの 炎症性メディエーター の放出を制御します。
現在のところわが国では、通年性の吸入アレルゲンに対して陽性を示す重症喘息の症例にしか本剤の使用は認められていません。注射剤であり、さらに薬価が高いというデメリットはありますが、その有効性や安全性は明らかにされています。
国際的にもその有効性が認められていて、GINA(the Global Iniriative for Asthma)ガイドラインでは、経口ステロイドより優先的な使用が奨励されています。投与後長期にわたって肺機能や喘息コントロールの安定、さらにアレルゲンに対する反応性低下を認めることから、いわゆる disease modifier としての一面を有する可能性が示唆されています。

薬物アレルギー 種類と症状

薬剤が原因で起こるアレルギー反応を 薬物アレルギー といいます。薬疹 などの皮膚障害のみならず、肝臓や腎臓などに内蔵疾患を合併するなど、重症の場合は死に至ることもあります。
代表的な 薬物アレルギー の種類と症状
1)過敏症
・アナフィラキシー:皮膚のかゆみ、声のかすれ、くしゃみ、喉のかゆみ、息苦しさ、動悸、意識混濁など

2)皮膚
・スティーブン・ジョンソン症候群:38度以上の高熱、目の充血、めやに、眼分泌物、まぶたの腫れ、眼が開けづらい、唇や陰部のただれ、排尿・排便時の痛み、喉の痛み、皮膚の広範囲が赤くなるなどの症状が持続したり、急に悪くなったりする
・中毒性表皮壊死症:38度以上の高熱、目の充血、唇のただれ、喉の痛み、皮膚の広範囲が赤くなるなどの症状が持続したり、急に悪くなったりする
・薬剤性過敏性症候群:皮膚の広範囲が赤くなる、38度以上の高熱、喉の痛み、全身がだるい、食欲がない、リンパ節が腫れるなどの症状が持続したり、急に悪くなったりする
・接触皮膚炎:薬剤を使用したらすぐにひりひりする、赤くなる、痒くなり塗ったところにジンマシンがでる

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