アレルギーの治療・減感作療法

花粉症などアレルギーの確実な根治療法はまだ確立されておらず、この減感作療法がもっとも根治療法に近いといわれています。一般的には抗原特異的減感作療法を指します。

特異的減感作療法は、アレルギーの元となる花粉のアレルギー物質を、濃度の薄いものからだんだんと濃度を上げつつ体内に注射していくことで、体をアレルゲンに慣れさせてアレルギーの症状をなくす療法です。そのメカニズムは完全に明らかにはなっていませんが、Th細胞のバランスを整えたり、免疫寛容を誘導するのではないかと考えられています。IgEではなくIgGを多く産生させ、アレルゲンがIgEと結びつく前にIgGと結びつくことによりアレルギー反応を弱めるという説もあります。このためIgGは遮断抗体とも呼ばれましたが、鼻粘膜におけるIgGの量は変化がないことから、この遮断抗体の関与には疑問が呈されています。

特異的減感作療法は、100年近い実績があり、効果と安全性は確かめられています。約6割〜8割の患者に効果があるといわれますが、そのうち完治と呼んでいいほどに症状が改善するのは、さらに半分程度といわれています。1年〜5年の長期に渡って何度も注射する必要があり、治療の即効性はありません。一般的には、花粉症のシーズンが終了してから(次のシーズンに向けて)治療を始めます。早い人では注射を始めた次のシーズンから効果を実感できます。きわめてまれにですがショック症状などが出る危険性も指摘されています。しかし、多くは濃度や量の間違いなど、治療のミスによるものだろうともいわれています。注射後の監督不行き届きや、患者自身が異常を医師に伝えないことなども、副作用を早期発見できない原因となります。

日本では皮内注射による療法が一般的ですが、海外では舌下投与も広く行なわれており、現在日本でも保険適用をめざして治験中です(自由診療として行っているクリニックも存在する)。舌下投与は副作用が出にくく、大量の抗原を投与できるので、効果の発現も早く、自宅で治療が行えることも大きなメリットです。

現在広く行われているのはスギやイネ科およびブタクサ程度のみと考えてよく、花粉症の種類によっては希望する治療が受けられないのが実情となっています(海外から薬剤を輸入して治療することもある)。治療用エキスが標準化されているのはスギのみです。薬がよく効かない人や重症の人向けの治療といわれてきたが、年齢の若い人ほど効果が高いなどのこともあり、通院時間の都合がつき、意欲のある患者にとっては試してみる価値のある治療法といえます。通院の関係上、社会に出る前、学生のうちに実施するとよいといわれています。ただし、脱落する患者が多く薬剤が無駄になることがあったり、保険における評価が低いためか、実施している医療機関は少ないようです。季節前の数ヶ月のみ注射する季節前法や、数日〜2週間程度入院して行う急速減感作という方法もあります。

新たな知見にもとづいて減感作療法をさらに効率的に行う治療法、たとえばプルラン(多糖類)修飾を行った抗原の投与、合成ペプチドまたはCpGモチーフと結合させたペプチドの投与、体内でアレルゲンを発現させるDNAワクチンなどの研究・開発が進められており、よい結果が得られているものもありますが、確実に花粉症が治せる保証はないのが現実です。遺伝子操作によって作られた花粉症緩和米も、経口摂取によって減感作を行おうというものである。民間療法における特定の花粉(エキス)の摂取なども、この効果を期待したものと思われます。

こうした根治療法に近いものとして、IgEに結合することでアレルギー反応を起こさせないようにする抗IgE抗体というのも試験中であり、実用化が待たれています(海外ではすで使われている)。減感作療法を併用しつつ、シーズン前に1回の注射を行った場合、かなりよい効果が得られているようです。

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このページは、が2008年11月21日 22:45に書いたブログ記事です。

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