イカ、タコなどの頭足類では、イカが食物アレルギーの原因食物として頻度が高く、ショック症状を引き起こした原因食物としても高い順位が報告されています。貝類は成人に多く、成人の食物アレルギーの原因食物として4位と高い順位を示しています。
軟体動物はアナフィラキシーショックなどの重篤な症状を起こすことがあり、注意を要するアレルゲンです。また、摂食によるもの以外に接触蕁麻疹(ジンマシン)の原因としても報告されています。軟体動物の主要アレルゲンはトロポミオシンとよばれる筋肉のタンパク質で、軟体動物以外にエビ・カニなどの甲殻類、ゴキブリなどの昆虫、ダニにも含まれ、これら共通抗原として知られています。
軟体動物のアレルギー症例は甲殻類アレルギーを合併することが多いことで知られており、ゴキブリ、ダニなどにもアレルギー症状を起こす可能性があります。また軟体動物はヒスタミンなどが含まれるため、仮性アレルゲンとして症状を引き起こすことがあります。さらに、貝類は生の状態では腸炎ビブリオ、サルモネラ菌などが付着していることが多く、食中毒によるアレルギー様症状を起こすことでも知られています。したがって、特異的IgE抗体の測定は、これら仮性アレルゲンや食中毒との鑑別にも有用です。
イカ・タコ
イカは、食物アレルギーを引き起こした原因食物として頻度が高く、ショック症状を引き起こした原因食物としても高い順位が報告されています。イカは食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIAn)の原因食物としても知られ、小麦、甲殻類に次いで3番目に多いと報告されています。イカは、アレルギーを起こしやすい食品として、加工食品に原材料名の表示が推奨されています。また、イカにはアニサキスが寄生していることが多く、アニサキスによりアレルギー症状を起こすことがあります。一方、イカに比べてタコのアレルギーの頻度は高くはありません。
アサリ・カキ(貝)・ホタテ
アサリ、カキ、ホタテに対するアレルギーの報告は多くはありませんがこれらの貝にアレルギーを起こした症例で甲殻類アレルギーを合併した割合は高いと報告されており、甲殻類アレルギーではこれらの貝類にも注意が必要です。また、同報告では、甲殻類アレルギーを合併していない魚アレルギー児は貝類の感作例が少なく、このような例では貝類が代替食として利用できる可能性が示唆されています。
・その他の特異的IgE抗体が測定可能な軟体動物
ムラサキイガイ(ムール貝)