2006年12月アーカイブ

イカ、タコなどの頭足類では、イカが食物アレルギーの原因食物として頻度が高く、ショック症状を引き起こした原因食物としても高い順位が報告されています。貝類は成人に多く、成人の食物アレルギーの原因食物として4位と高い順位を示しています。
軟体動物はアナフィラキシーショックなどの重篤な症状を起こすことがあり、注意を要するアレルゲンです。また、摂食によるもの以外に接触蕁麻疹(ジンマシン)の原因としても報告されています。軟体動物の主要アレルゲンはトロポミオシンとよばれる筋肉のタンパク質で、軟体動物以外にエビ・カニなどの甲殻類、ゴキブリなどの昆虫、ダニにも含まれ、これら共通抗原として知られています。

軟体動物のアレルギー症例は甲殻類アレルギーを合併することが多いことで知られており、ゴキブリ、ダニなどにもアレルギー症状を起こす可能性があります。また軟体動物はヒスタミンなどが含まれるため、仮性アレルゲンとして症状を引き起こすことがあります。さらに、貝類は生の状態では腸炎ビブリオ、サルモネラ菌などが付着していることが多く、食中毒によるアレルギー様症状を起こすことでも知られています。したがって、特異的IgE抗体の測定は、これら仮性アレルゲンや食中毒との鑑別にも有用です。

仮性アレルゲン

ビールで身体にブツブツができる、たけのこのあく抜きが不充分でノドがイガイガする、トマトやしょうゆが皮膚について赤くなるなどの経験ありませんか?食品にふくまれている、ヒスタミンなどの化学物質によって皮膚のかゆみや赤みを引き起こしアレルギーと同じような症状を示すものを仮性アレルゲンと言います。

魚卵は、アレルギーの原因食物として上位に挙げられています。また、重篤な症状を引き起こす場合があり、とくに感作率の高い乳幼児では注意を要するアレルゲンです。厚生労働省による食物アレルギー対策検討委員会の結果では、魚卵によるアレルギーの頻度は、ピーナッツと並び8番目と報告され、特にイクラは、ショック症状の原因食物として7位、入院を要した原因食物として5位に挙げられています。魚卵と鶏卵の間には共通抗原性が認められず、異なる魚種の卵間では認められています。また、魚卵と親魚肉の間の共通抗原性については、認められないという報告と、認められるという報告があります。

風邪をひいた時に、いつまでも咳が続いて夜なかなか眠れないという経験ありませんか?以下の症状に心当たりがあれば“咳喘息”かもしれません。
咳喘息は、ゼーゼー、ヒューヒューや呼吸困難がなく、慢性に咳だけが続く疾患で、喘息の前段階と考えられている。最近、非常に増えている疾患で、咳喘息患者の受診は年々増加の一途をたどっています。
 
多くは風邪に続いて起こるので、風邪を引いた後も3〜4週間以上、咳が続いたら、咳喘息を考える必要があります。患者の多くは「風邪を引いてから咳だけが止まらない」「熱もなく、喉の痛みもないのに、いつまでも咳が続いている」と訴えて受診します。

大豆、ピーナッツ、いずれもマメ科の植物です。多くの加工食品の増粘剤、安定剤としてマメ科植物の種子が使用されています。特異的IgE抗体でみるとマメ科間では強い共通抗原性が認められますが、臨床的にはそれ程ではありません。例えば、ピーナッツアレルギー患者で他の豆にも反応する例は5%と報告されています。

●大豆
大豆は大豆としてだけでなく、豆腐、みそ、しょう油、調理油などに加工されたり、種々の加工食品(マーガリン、加工食肉など)に使用されたりしています。そのため大豆成分を含まない加工食品の選択は困難です。以前は鶏卵、牛乳に次ぐ原因アレルゲンとされてきましたが、食事の欧米化にともない小麦、そば、魚類などよりも原因アレルゲンとなる頻度は低くなりました。しかし、今でも乳幼児のアトピー性皮膚炎および即時型症状を呈する症例において重要なアレルゲンのひとつです。小麦と同様に特異的IgE抗体が陽性でも大豆を摂取することが可能な例が少なからず存在します。

ナッツ類は、アナフィラキシーショックなどの重篤な症状を引き起こす頻度が高い重要なアレルゲンです。ナッツ類は、パンや菓子類のほか、和え物や揚げ衣など様々な食品に使用されています。

症状は蕁麻疹、口腔アレルギー症候群(OAS)、喘鳴、アナフィラキシーショックなどがあり、ナッツ類に対するアレルギーは寛解しにくいといわれています。
またナッツ類は、ヒスタミン遊離物質などを含むものがあり、かゆみや偏頭痛などの症状を引き起こす仮性アレルゲンとしても報告されています。ナッツ間には共通抗原性があるといわれています。しかしながら、数種類のナッツに反応する例よりも一種類のナッツに単独で症状を起こす例の方が多く、個々のナッツに特異的なアレルゲンが存在すると考えられます。

ナッツ類はピーナッツとも共通抗原性があるといわれていますがピーナッツIgE抗体が陽性で、ピーナッツに対してアレルギー症状を示した症例のほとんどは、樹木ナッツに対してはIgE抗体陰性を示したと報告されています。一方、ナッツは花粉、果物、野菜とも共通抗原性があり、特にシラカバ花粉症患者でナッツによるOASを引き起こすことがあります。

口腔アレルギー症候群

口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome)は通常、白樺を中心とした花粉症患者において、新鮮な果物、野菜、ナッツ類などの摂取に伴って生じる主としてかゆみや腫れなどの口腔咽頭の粘膜症状を指し、この特異な食物アレルギーは花粉アレルゲンと植物性食物アレルゲンに共通する抗原分子によると考えられています。北海道のシラカンバ花粉症や兵庫県の住宅地に植林されたオオバヤシャブシによる花粉症(カバノキ科ハンノキ属)の方に多くリンゴ、桃などのバラ科の果物による口腔アレルギーが起こることが知られています。またイネ科花粉症やブタクサ花粉症、さらにはスギ花粉症にもこの口腔アレルギーが起こるという報告もあります。

食物依存性運動誘発アナフィラキシーとは・・ある特定の食物で、普段は食べてもなんともないのに、食べた後に運動をするとアナフィラキシーを起こすことがあります。これは食物依存性運動誘発アナフィラキシーとよばれ、運動によって原因食物の吸収が増加して起こるといわれていますが、その仕組みについてははっきりとはわかっていません。
“学校で給食を食べ、昼休みにスポーツに興じてじんましんが出た”というような場合は、食物依存性運動誘発アナフィラキシーを疑った方がいいかもしれません。医師の診察を受けることをお勧めします。

●症状は?
1)皮膚症状:全身の熱感、掻痒感に引き続き、紅斑、じん麻疹、血管性浮腫など
2)消化器症状:腹痛、下痢、嘔吐など
3)重症例では、喉頭浮腫による呼吸困難、曖声、喘鳴、気管支攣縮による喘鳴・呼吸困難、ショックによる血圧低下、意識消失など生命の危険を伴うこともあります。

通常皮膚症状が運動後30分以内にあらわれ、その後、呼吸困難、発汗、意識障害等があらわれます。食物依存性運動誘発アナフィラキシーは、ある特定の食物を食べた後2〜3時間以内に運動を行ったときに、アナフィラキシー症状があらわれます。

穀類は鶏卵、牛乳に次いで乳幼児において重要なアレルゲンです。穀類間には強い共通抗原が存在するため、同じ患者さんで複数の穀類に対する特異的IgE抗体が検出されます。
穀類に対して特異的IgE抗体が陽性を示す乳幼児アトピー性皮膚炎は重症例が多いと報告されています。穀類の場合、特異的IgE抗体が陽性でも当該穀類を摂取可能な例が他のアレルゲンに比較して多いといわれています。

●小麦、グルテン
小麦は、乳幼児の食物アレルギーおよび思春期に多い食物依存運動誘発アナフィラキシーの重要な原因となります。また、製粉、製パン、製麺業者で小麦を吸入することで喘息を発症することも報告されています。
小麦アレルゲンは、塩溶液に可溶性の蛋白と不溶性の蛋白に大別されます。小麦は塩溶液に可溶性の成分を、グルテンは塩不溶性(実際はグリアジン)の成分を原料として用いています。いずれも小麦アレルギーの診断に有用ですが、とくに、グルテンは食物依存運動誘発アナフィラキシーの診断に有用と報告されています。

小麦アレルギーの方にも食べて頂ける小麦及び小麦グルテンを用いない米粉(ゆきひかり)100%のパンを使用したお米パンレシピです。

★メープルお米パン
★材料★
◇ベーシックゆきひかり・・・お好みの厚さで
◇メープルシロップ ・・・・・適量
1)お米パンを10cmくらいに切り、まわりを残して中をくりぬく。
2)くりぬいたパンはさいのめに切ります。
3)さいのめに切ったパンはもとにもどして上からメープルシロップをたっぷりかけます。
4)オーブントースターで焼きます。

メープルお米パン

ラテックスアレルギー

80年代後半から天然ゴム製品に対する即時型アレルギー反応が各国で報告され始め、ラテックスアレルギーと呼ばれるようになりました。原因となる天然ゴム製品には航空機用タイヤ、トラック及びバス用タイヤ、ゴムベルト、履き物、糸ゴム、粘接着剤、輪ゴム、医療用製品などがあります。
このアレルギー反応のハイリスクグループはおもに職業的に天然ゴム製手袋を常用する医師や看護師で、5〜15%の人がIgE抗体陽性であるとも報告されています。さらに、ゴム手袋に塗布されているパウダーやゴムタイヤの磨耗紛がラテックス抗原を伴って飛散していることから、こうした微粒子の吸入が重要な曝露経路の一つであると指摘されています。

アレルギー症状としては接触じんま疹など比較的軽いものが多いのですが、全身性じんま疹やアナフィラキシーショックに発展する場合もあり、アメリカでは死亡例が報告されています。

気管支喘息の治療は気管支拡張薬を使用した、発作時の治療が中心ですが、吸入ステロイド薬を用いた毎日の予防治療にも注意が向けられています。
2006年7月に乳幼児用の吸入ステロイド薬(ブデソニド吸入懸濁液:商品名バルミコート)が日本で初めて承認されました。これによって、これまで使用を認められなかった5歳未満の子供についても発作時以外の治療・予防ができるようになりました。

ブデソニド吸入用懸濁液の臨床試験は、2003年7月から2004年8月にかけて国内第III相試験が、11施設で生後6か月から5歳未満の患者61人を対象に行われ、1日1回、あるいは2回の使用で、ぜんそく発作の頻度を投与前に比較して、2週間で2分の1に、4週間で5分の1に減少させた。また、夜間睡眠が妨げられた日数の割合も61.4%に減少させているとの報告があります。

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