昆虫の糞、死骸の粉砕物、鱗粉、鱗毛などが吸入性のアレルゲンになります。屋外ではユスリカ、ガ、チョウなどが、室内ではゴキブリ、食品害虫のガ類(メイガ)やチャタテムシ、衣類につくガ類(イガ)などが気道アレルギーの原因となります。
屋外の昆虫抗原量は年間で2峰性(初夏・秋)を示し、特に秋の空中昆虫抗原量は大量です。室内塵中にもゴキブリ、ガ、ユスリカなどの抗原が検出され、これらは室内に生息している昆虫のみならず、灯火に誘引され室内に侵入した室内昆虫由来と考えられています。
気管支喘息、アレルギー性鼻炎におけるガ、ユスリカのIgE抗体陽性率は全国でダニ、スギ、イネ科花粉に次いで高く、これらの昆虫は普遍的な感作抗原となります。気管支喘息では、空中の昆虫抗原量が増加する時期に一致して昆虫に対するIgE抗体の上昇および症状の悪化が認められます。またガ、チョウ、ユスリカ、ゴキブリなどの感作例で吸入誘発試験陽性例が多数報告され、これら昆虫が気道アレルギーの原因となることが示されています。
昆虫間には、共通抗原および各々の種に特異的な抗原の存在が報告されています。
ガのアレルゲンの原料にはカイコガの翅(はね)が用いられています。カイコガの翅の抗原性は他のガおよびチョウとほぼ一致すると報告されています。乾燥食品、菓子、貯蔵穀物にしばしば発生するある
種のメイガは、全国120戸の家屋を調査した結果、屋内で90%、屋外で94%捕獲されました。また、室内塵中にガ、チョウなどの鱗粉が検出されることからアレルギー検査でガが陽性となった場合、屋外でガ類が発生する時期の発症に注意するだけでなく、屋内の発生源(乾燥食品、衣類)の整理、清掃も昆虫抗原除去に重要となります。