2006年8月アーカイブ

アレルギー合併症

アレルギー性鼻炎でみられる3主徴はくしゃみ、鼻水、鼻づまりですが、特に大量の抗原に暴露される花粉症では、眼症状、口腔症状、咽頭症状、皮膚症状、発熱、頭痛などの全身症状の出現も高くなります。
これらの症状は、抗原そのものが標的臓器で障害をおこす以外に、鼻症状による鼻呼吸障害の結果として誘導されるもの、さらに治療薬による副作用もあり、鑑別には注意を要します。

1)アレルギー性結膜炎
スギ花粉症では、必ずといってよいほどみられます。ヒノキ、カモガヤ、ブタクサ花粉症でもみられ、季節性にみられることが特徴です。掻痒感(そうようかん)、流涙、異物感、眼痛などが主症状です。

2)口腔症状
鼻呼吸障害に起因する 口腔乾燥、味覚障害の頻度が高く、薬剤性の味覚障害もあります。また、ある特定の食物を食べると、口の中や唇に掻痒感や浮腫状腫脹が出現するoral allergy syndromeも花粉症と関連があります。シラカバ花粉症患者では、リンゴやサクランボなどバラ科の果実を摂取したときに好発することがよく知られています。そのほかイネ科花粉症ではトマト・メロン・ミカン。ブタクサ・ヨモギ花粉症ではメロン・バナナ・セロリなどが共通抗原をもっていると指摘されています。

アトピーの遺伝子的背景

21世紀の国民病といわれるアトピー性疾患は、羅患者も多く(喘息5〜10%、アトピー性皮膚炎20%、花粉症30%)その対策は急務です。アレルギー(アトピー)は、普遍的な抗原(室内塵、動物の毛や花粉)に対してIgE抗体を作りやすい体質と定義され、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、結膜炎などがアトピー性疾患の代表です。

人間には、内部に侵入しようとするものを排除する機構(免疫機能)があります。具体的には、細菌・ウィルスなどから身体を守るためのシステムであり、私たちが健康に暮らしていくために必要不可欠のものです。しかし、アレルギー疾患の患者では、本来は無害であるはずのダニや花粉(これらはヒトにや対する感染性がない)に対して、免疫システムが過剰反応して「アレルギー反応」を引き起こします。

これらの疾患の共通点として、1)IgEが上昇することが多い、2)組織(喘息では気道、花粉症では鼻粘膜、アトピー性皮膚炎では皮膚)に好酸球やTリンパ球、肥満細胞などの浸潤が認められる、などが挙げられます。

サイトカインとケモカイン

サイトカインは、白血球で産生される非抗体性の液性因子であり細胞間の情報伝達を担う糖蛋白質の総称です。
機能的な特徴としては
1)極めて微量で作用し、その作用は標的細胞表面上に発現している受容体を介して作用する
2)異なったサイトカインが1つの細胞に作用することでサイトカインネットワークを形成している
3)1つのサイトカインが複数の機能をもち、1つの機能は複数の異なるサイトカインに共有される
ことなどがあげられます。

アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、喘息を引き起こす原因にダニがあります。家屋内で生育するダニが中心で、中でもチリダニ科のヤケヒョウヒダニ、コナヒョウヒダニが主な原因です。
このダニは人を刺しませんが、圧倒的に数が多い為、環境によっては大繁殖します。さらにその死骸や糞もアレルゲンとなります。

・繁殖条件
1)恒温多湿である(25〜28℃、湿度70%以上)
2)えさとしての有機成分がある(人や動物のフケ、アカ)
3)もぐって産卵できる場所がある(ぬいぐるみ、ソファー、毛布、布団、 ジュータン、押し入れ、鏡台、イヌ・ネコなどのペット)

アレルギー性鼻炎

アレルギー性鼻炎は、発作性反復性のくしゃみ・鼻水・鼻づまりを主症状とし、時に頭痛・咽頭痛・軽度の発熱・全身倦怠感を示します。
アレルギー性鼻炎は2種類に分類され、ダニやハウスダストによって症状を引き起こす通年性アレルギー性鼻炎と花粉による季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)があります。
ここでは、通年性アレルギー性鼻炎について説明します。これは一年中症状を示しますが、季節の変わり目に憎悪傾向を示します。起床時に症状の発現が多く、埃に抗原が含まれているために掃除などで埃に暴露されると症状がでます。

免疫グロブリン

免疫グロブリン(Immunoglobulin)は、脊椎動物の血清や体液などに存在する抗体活性をもったグロブリンの総称で、 Igと略記します。
免疫グロブリンは抗原性の差異からIgA、IgD、IgE、IgG、IgMの5種類に分けられます。

抗体は抗原刺激によって産生されます。免疫グロブリンの基本構造はY字型を呈し、IgGにおいては分子量約5000〜7000の2個の重いペプチド鎖(Heavy chain:H鎖)と分子量23000の2個の軽いペプチド鎖(Light chain:L鎖)が互いにSS結合によって結びつけられたものです。

H鎖:免疫グロブリンは種類によって、それぞれ特有な化学構造をもっており、γ・α・μ・δ・εの5種類があります。すなわちγ(ガンマ)をもった免疫グロブリンをIgG、α(アルファ)をもったものがIgA、μ(マイクロ)をもったものがIgM、δ(デルタ)をもったものがIgD、ε(イプシロン)をもったものがIgEということになります。

L鎖:各種の免疫グロブリンに共通で、抗原性の異なる2種類のκ鎖とλ鎖があります。κ差をもつものをK型、λ鎖をもつものをL型と呼びます。

ユスリカ(成虫)

ユスリカ(成虫)は、初夏から秋にかけて市街地の排水溝、河畔などに大量発生し、蚊柱を形成する吸血しない蚊で、幼虫のアカムシが水中でゆする動きをするとこらから「ユスリカ」と呼ばれています。
成虫は蚊によく似た大きさや姿をしていますが、刺すことはありません。また蚊のような鱗粉も持たないため、蚊と見誤って叩いても、黒っぽい粉のようなものが肌に付くことはありません。
死骸の粉砕物を吸入することでアレルギー症状を発現します。多くのユスリカ腫間に強い共通高原性があることが報告されています。
検査で用いられる抗原にはセスジユスリカの成虫体が原料として使用されています。

Chironomus plumosus01.jpg

カンジダ

カンジダ(Candida albicans)は、真菌(カビ)の一種で空気中ではほとんど見ることができません。通常は、土壌中・有機物の残渣や人体中にみられます。
人体中では、咽頭喉頭部や糞便中で腐性菌として繁殖します。
気管支喘息・鼻炎をひきおこす原因アレルゲンのひとつです。

カンジダ菌の図です

顕微鏡写真


アレルギー症状を引き起こす原因となるものを「アレルゲン」といい現在、検査可能なアレルゲンは200種類以上あります。その主なものは、以下のように分類されます。

・吸入性アレルゲン
<花粉>
1)イネ科植物
カモガヤ、ハルガヤ、オオアワガエリ、ギョウギシバ、ナガハグサ、オオスズメノテッポウ、ヒロハウシノケグサ、ホソムギ、アシ、コヌカグサ(属)、セイバンモロコシ、小麦(属)、スズメノヒエ(属)
2)雑草
ブタクサ、ヨモギ、カナムグラ、アキノキリンソウ、タンポポ(属)、ブタクサモドキ、オオブタクサ、ニガヨモギ、フランスギク、ヘラオオバコ、シロザ、ヒメスイバ、イラクサ(属)
3)樹木
スギ、ヒノキ、ハンノキ(属)、シラカンバ(属)ビャクシン(属)、マツ(属)、カエデ(属)、ブナ(属)、コナラ(属)、ニレ(属)、オリーブ、クルミ(属)、ヤナギ(属)、アカシア(属)、クワ(属)

<花粉以外>
1)室内塵
ハウスダスト1、ハウスダスト2
2)ダニ
ヤケヒョウヒダニ、コナヒョウヒダニ、アシブトコナダニ、サヤアシニクダニ、ケナガコナダニ
3)真菌
カンジダ、ピティロスポリウム、ビール酵母、ペニシリウム、クラドスポリウム、アスペルギルス、ムコール、アルテルナリア、ヘルミントスポリウム、トリコフィトン
4)細菌
黄色ブドウ球菌A、黄色ブドウ球菌B
5)動物
ネコ皮屑、イヌ皮屑、ハムスター上皮、モルモット上皮、家兎上皮、ラット、マウス、セキセイインコ羽毛、セキセイインコのふん、セキセイインコ血清蛋白、ニワトリ羽毛、ガチョウ羽毛、アヒル羽毛、ハトのふん、ウマ皮屑、ウシ皮屑、ヤギ上皮、羊上皮、豚上皮
6)職業性
絹、ホルマリン、ラテックス、オオバコ種子、イソシアネート、エチレンオキサイド、無水フタル酸、綿

IV型アレルギー(細胞免疫性アレルギー)は、I〜III型が抗体を介する液性免疫の過剰反応の結果であるのに対し、Tリンパ球による細胞免疫の過剰反応の結果としておこります。
活性化した感作Tリンパ球の作用によって、マクロファージが局所に集積したり、肉芽腫を作る遅延型(接触皮膚炎・ツベルクリン反応など)と、キラーTリンパ球が直接細胞を障害するタイプ(臓器移植の際の拒絶反応)とがあります。薬疹もこのタイプです。

III型アレルギー(免疫複合体症)は、抗原と抗体が結びついた抗原抗体複合体(免疫複合体)により活性化された補体は、好中球を局所に集めます。
その好中球が免疫複合体を貪食する際に放出するタンパク分解酵素や活性酸素が組織を障害します。また免疫複合体が血小板に結合し、血小板を凝集させると血小栓ができますが、それが血管壁に付着して組織を障害します。

おもな疾患としては、次のものがあります。
・血清病
・全身性エリテマトーデスSLE(ループス腎炎を含む)
・慢性関節リウマチ
・糸球体腎炎

II型アレルギー(細胞融解型アレルギー)は、細胞表面にある抗原や細胞表面に結合した薬剤などの化学物質に抗体が結びつき、それに活性化された補体が作用して細胞を融解します。
細胞膜表面に結合したIgG抗体に、マクロファージやキラーTリンパ球などが結合して細胞を障害するタイプのものもあります

おもな疾患としては、次のものがあります。
・特発性血小板減少性紫斑病
・不適合輸血による溶血性貧血
・新生児溶血性疾患(Rh・ABO不適合)
・自己免疫性溶血性貧血
・薬剤性溶血性貧血
・重症筋無力症

花粉症とは 原因と症状

花粉症は、風で運ばれた花粉がひきおこすアレルギーです。くしゃみ、鼻水、鼻づまりが問題となる花粉の時期に突然おこります。春には樹木(スギ)、夏にはイネ科植物(カモガヤ)、秋には雑草(ブタクサ)が有名です。ハウスダストと違って花粉の直径は大きく、ほとんどが鼻や眼の粘膜でとらえられるのでこれらの粘膜の症状が主になり、気管支での喘息はおこりません。

【原因と症状】
花粉はどこにでもあって、だれもが吸入しているのに花粉症にかかる人とかからない人があります。これはアレルギー体質の人だけが花粉症にかかるからです。
人口の10〜20%に発病するスギ花粉症について、かかりやすい家系の研究から、スギ花粉症は遺伝することがわかってきました。アレルギーを抑制する遺伝子に欠陥があって、アレルギーにかかりやすくなり免疫グロブリン(IgE)抗体を作りやすい体質になります。

地方よりも、スギ花粉の少ない都市部にスギ花粉症が多いのは、アレルギー体質が基盤となって、それに都市部の大気汚染(おもにディーゼル排泄微粒子)が花粉症を促進する環境因子としてかかわっているからです

小麦・大麦・ライ麦・オート麦
小麦・大麦・ライ麦・オート麦の粉は吸入することで喘息を、食物として摂取することで胃腸障害を、皮膚と接触することで湿疹などのアレルギー症状を引き起こします。
小麦に対する過敏症は幼児のみならず成人にもみられます。反応は胃腸障害のみに限定することがほとんどです。

[フリー写真] ライ麦パンとオリーブオイル - パブリック ...

ブタクサ・オオブタクサ

ブタクサ
キク科 開花時期 8〜10月
茎の高さ30〜100cmの分枝した一年生の雑草。道端、乾燥した野原、荒地に群生する。日本全域に生息するが、東北以北には少ない。花粉症や気管支喘息症状をおこす。

ブタクサ

現在アレルギーの治療は、これをやれば必ず良くなるといった絶対的なものはありません。それは発症する要因が各人で違っていたり、複雑に入り組んでいるからです。
大事なことは、個人個人のアレルギーがどうして起こるのか、その原因を検査で調べ確認することです。確認ができたら、その原因に対処することで症状の改善を図ります。

■ アレルギーの検査
アレルギー検査は大きく分けて
・アトピー体質を見分けるもの・・アトピー鑑別試験
・現在の体の状態をみるもの・・・総IgE
・アレルギーを起こす原因物質(アレルゲン)をしらべるもの・・・特異的IgEの測定
の3種類があります。これらの検査は血液で簡単に調べられます

■ アトピー鑑別試験
アトピー体質の有無を判定、および吸入性アレルギーの鑑別診断
結果:陽性/陰性
陽性であればアトピー体質だと疑われます。また、吸入性のアレルゲンが関係していると疑われます。

■ 総IgE
血液の中にどれだけIgE抗体があるかを調べます。治療効果の判定にも利用されます。
年齢により基準値が異なります
・1歳未満・・・20 IU/mL以下
・1〜3歳・・・30 IU/mL以下
・4〜6歳・・・110 IU/mL以下
・7歳〜成人・・170 IU/mL以下

■ 乳児期(0〜1歳)
乳・幼児期のアトピー性皮膚炎と同様に、ダニ・食物性抗原に対する特異IgEが高率に検出されます。
・ヤケヒョウヒダニ  ・大豆 ・コナヒョウヒダニ  ・小麦
・ハウスダスト ・米 ・卵白  ・ソバ ・ミルク ・ピーナッツ

■ 幼児期(2〜5歳)
乳児期のダニ・食物性抗原に加え、動物・真菌類(カビ)の吸入性抗原に対する特異IgEが高率に検出されます。
・ヤケヒョウヒダニ ・動物上皮 ・コナヒョウヒダニ ・カビ
・ハウスダスト ・ミルク ・卵白 ・米 ・大豆 ・ソバ

気管支喘息

気管支喘息は、気道(気管や気管支など空気の通り道)がいろいろな外因・内因によって異常な過敏反応をおこし、比較的太い気管支のレベルで、気管支を輪状に取り巻いている平滑筋の異常収縮や粘膜の浮腫(ふしゅ)による気道の狭窄、多量の粘液分泌による気道閉塞のため、吸いこんだ空気を吐き出せなくなってしまった状態をいいます。発作性の呼吸困難、喘鳴、せき、たんがおもな症状です。

【原因】日本では、人口の3%にみられ、年々増加しています。成人患者の3分の1は10歳以下で発症小児喘息は思春期になると70〜80%は自然に治りますが、その半数は成人になると再発します。喘息患者の大半は、なんらかのアレルギーがあり、ダニ・カビ動物の羽毛・花粉・木材の粉塵などがアレルゲンとなっています。

アナフィラキシーショック

全身にわたってアレルギー反応が起きる場合をアナフィラキシーといいます。これは、生命に危険を伴う重篤な状態です。

食物アナフィラキシーとは 
食物アナフィラキシーとは、特定の食物を食べることによっておこる全身性のアレルギー反応です。症状の出現の仕方は急激で、多くは食べ物を食べて5分から30分以内にあらわれます。

・食物アナフィラキシーの症状
食物によるアナフィラキシーでよく見られる症状は、食べた後すぐに口の中がしびれたり、のどがつまったり、唇が腫れたりします。皮膚の症状としてはかゆくなったり、蕁麻疹が出たり、皮膚が赤くなったりします。消化器症状としては吐き気や嘔吐、腹痛、下痢などがみられます。呼吸器の症状としては、せきが出たり、胸がゼーゼーとなったり、呼吸が苦しくなったりします。
そのなかでも特に症状が強く、意識がもうろうとしたり、血圧が低下したりする状態をアナフィラキシーショックといい、大変危険な状態です。

アレルゲンの種類

アレルギー症状を引き起こす原因となるものを「アレルゲン」といい現在、検査可能なアレルゲンは200種類以上あり、その主なものは、以下のように分類されます。

・吸入性アレルゲン
  ・花粉(樹木、雑草、イネ科植物)
  ・花粉以外(ダニ、カビ、動物、室内塵、職業性)
・食物性アレルゲン
  ・卵
  ・牛乳
  ・肉
  ・魚介類
  ・穀物
  ・豆類/ナッツ
  ・果物
  ・野菜
・その他のアレルゲン
  ・寄生虫
  ・昆虫
  ・薬物

アレルゲンとは

アレルゲン(Allergen)とはアレルギー疾患を持っている人の抗体と特異的に反応する抗原のことをいいます。一般には、そのアレルギー症状を引き起こす原因となるものを言いますが、感作はされているが具体的な症状があるわけではない人においても、その抗体と反応する抗原もアレルゲンと呼びます。
さらに広義には、それに対するアレルギー患者が多いなどアレルギーの原因によくなり得る物質のことです。

正確には抗体と反応してアレルギーを引き起こす物質(抗原)そのものを指しますが、その抗原を含んだ物質(食品など)を指すことも多い。

病原菌などの有害な侵入物に対して、生体は自己と非自己である異物(抗原)を識別し、抗原のもつ有害な作用に反応することで自己を守っています。生体のもつこのような自己防衛の働きを免疫といいます。抗原に対する防御反応が過剰すぎて、生体に障害(病気)をもたらす場合をアレルギーといいます。

アレルギーはおこりかたによって次の4つに分類されます。
1)I型アレルギー(即時型アレルギー)
2)II型アレルギー(細胞融解型アレルギー)
3)III型アレルギー(免疫複合体症)
4)IV型アレルギー(細胞免疫性アレルギー)

ここではI型アレルギーについて簡単に説明します。即時型といわれているように、抗原の侵入後数分から数十分以内に症状がおこります。

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